シネマライフキャリア - Cinema Life Career -

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【映画】マンチェスター・バイ・ザ・シー 〜癒えない傷も、忘れられない痛みも、その心ごと、生きていく。〜

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洋画でこのような作品に出会えたことが嬉しい。
しかもアカデミー賞主演男優賞脚本賞を受賞されている作品。

ある一人のしがない男が過去や人と向き合うことで変わっていき、再生していこうとするストーリー。
「消えない傷も、忘れられない痛みも。その心ごと、生きていく。」
このキャッチコピーがラストで腑に落ちて、本当に素晴らしいキャッチコピーだと思った。

過去の悲劇から逃げるようにマンチェスターを出て、ボストンで便利屋として生計を立てていたしがない独り身のリーが、兄が亡くなることを知らされ、マンチェスターに戻ってくる。

ボストンに在住していたときの彼は、粗い性格からなかなか周りと馴染むことができず、毎日を淡々と過ごしていた。
明らかに充実しているようには見えない。

兄からは全く知らされていなかったが、後見人として数週間、16歳の甥の面倒を見ることになったり、処理しないといけないことになり、目を背けていた過去に向き合わざるを得なくなる。

ボストンで暮らしているシーンの中では想像もできないようなリーの過去が、マンチェスターに戻ってきてからの生活による過去の反芻によって、どんどん明らかになってくる。
彼がマンチェスターから出た理由、逃げていた理由がわかる。
また、辛い経験を辛いと言うことすら許されない罪悪感、自己否定せざるを得なくなる状況。
リーの心情の変化や行動、一つ一つの言葉の重さが痛いほど伝わってくる。

ただ、否が応でもその過去と向き合っていく中で、またその過去の生活で、関わってきた人とやりとりをすることで、甥のことや船のことを自分本位に決めていこうとしていたリーに変化が生まれてくる。

兄が完璧な人柄のよい人だったため、それと比較すると粗野で、過去にとんでもないことをしてはしまっているが、彼なりに元妻の幸せや甥の幸せを考えながら、発言していたり、自分なりの答えを出していこうとする姿は、一人の人間として素敵だなと感じた。

最終的に彼はマンチェスターでの過去を、乗り越えることはできなかったが、何か少し楽になったように、新たな自分の道を歩み始めることになり、ストーリーが終わる。

どちらかというと重い話ではあるものの、少しずつ救われていく感じがよかった。

外国でも日本と同じように、過去にもがきながら今を苦しみながら生きている人がいて、どうにかしたいけど、なかなか踏み出せずに葛藤している人はいるんだなと、この映画を観て感じました。

そういうときは、一人で抱え込むのではなく、半ば強制的にでも人と関わっていくことで、楽になっていくことがあるし、解決できることがある。

人生は乗り越えて進んでいくことばかりでなく、受け入れながら進んでいくこともあり、それこそが人生の本質でもあるというのが、この映画で気づいたこと。

内容もストーリーの展開のされ方もわりと好みの作品。
ただ、この手の映画は邦画の方がよりリアルで深い作品が多いため、インパクトとしては若干弱かった。
自分の中では(今まで観た作品の中で)、「永い言い訳」、「恋人たち」、「そこのみにて光輝く」、「しゃぼん玉」辺りがこの作品と重なる。

しかし、冒頭にも書いたが、洋画でこのような作品に出会えたことは本当に嬉しい。
ケイシーとルーカスの演技に脱帽。