シネマライフキャリア - Cinema Life Career -

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【映画】縞模様のパジャマの少年 〜ホロコーストの愚かさ〜

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ホロコーストがいかに悪であったか、いかに愚かなものであったか、これを観ると明らかである。

冒険好きなブルーノはとても純粋で優しい少年。
都会で友達と暮らしていたが、あるとき父の昇進がきっかけで田舎へ引っ越すことになる。

友達と離れるのが寂しくて、見知らぬ地で友人ができるか不安で…そんな姿もどこにでもいるような本当に普通の少年。

引っ越した先でブルーノは、孤独になる。
学校にも行けず、友達もできない。
遊ぶときはいつも1人で大好きな探検もできない。

ブランコを作ったことがきっかけで、外に行けるルートを見つけたブルーノは、親の目を盗んで探検するように。

その探検で彼が見つけたものはユダヤ人が収容された収容所であった。
でも彼はそれがどんな場所なのか、もちろん知らない。

そこで縞模様のパジャマを着た1人の孤独な少年シュムエルと出会う。
心の距離は近づいていくはずなのに、網の壁があまりにも高く大きく立ちはだかる。

この網は何なのか。
なぜシュムエルは家に来れないのか。
なぜ都会にいた頃のようにはしゃいだり遊んだりできないのか。
なぜいつもパジャマを着ているのか。

事情を知らないからこそ出てくるたくさんの疑問と父親への疑心暗鬼。

ブルーノが純粋で無知な少年だからこそ、その眼に映るそれぞれの疑問と彼がとろうとした行動、彼の優しさと対比のような形でホロコーストがより痛々しく映る。

かたやではユダヤ人の少年で、かたやでは収容所の所長である軍人の子である少年。
それでも少年たちにとっては心を許せる友達同士であることに変わりはない。
それが愚かな大人の事情に邪魔される。

正しいかどうかをちゃんと説明できていないし、うしろめたさを感じている時点で明らかにホロコーストが誤ってることに気づいているはずだ。
でも止められない、大人の犯す愚かな行為で何も知らない少年ブルーノの正しく清らかな行為が正しいかわからずにもやもやしてしまう。
見てられない。

さらに「教育=洗脳」となり得ることの恐怖。
教育に疑問や自分で考えることを取り入れないと、それはもう洗脳でしかなくなることがよくわかる。
正しい、正しくない、が自分でなくて他の人の考えに委ねられるようになるから。

そしてラストシーン。
何も知らないブルーノがパジャマをもらって収容所に入り、シュムエルの父親を探す。
じわじわと嫌な予感が押し寄せる。
嫌な予感は最後で現実となった。
心優しい少年の悲しすぎる末路。

所長である父親は、子のブルーノを助けるために動いていたが、あのとき収容所で毒殺されたユダヤ人たちは父親よりも悲惨な状況だったんだよ、と、そんなことをあなたたちはしてるんだよ、と、その明らかな間違いに自ら気づくように持っていくような終わり方。

自分がされて嫌なことを他の人にしない。
子供のときに習うようなことのはず。
それが大人になってもできないと、こんな悲惨なことにもなりかねない。

鬱映画だったが、この時代をどちらもの子供目線からとったこの作品は素晴らしい名作です。

所長の妻が軍人らの行為を反対し続けていたのが唯一の救いだった。