シネマライフキャリア - Cinema Life Career -

映画やドラマをメインにコンテンツの感想記事と生き方やキャリアを考える上で参考になりそうな記事を書いていきます。

【映画】THE SHAPE OF WATER シェイプ・オブ・ウォーター 〜アート的な美しい愛の表現〜

f:id:takuro901:20180304112423j:image

シェイプ・オブ・ウォーター

シンプルだけど、深くて美しい。
わかりやすいんだけど、鑑賞後はなぜかすごく満たされたような気持ちになる。
映画のファンタジーな世界に飛び込んだと思いきや、ちゃんとした愛や人間味が描かれているため、現実の世界のようにも思える。
そんな映画だった。
心地よく心が満たされる映画体験。

1962年、アメリカが舞台。
政府の秘密研究所で清掃員として働くイライザは、得体の知れない捜査対象の生物に興味を抱くようになる。

気にはしているものの、接そうとしていること→接して仲良くなろうとしていることを他の人にバレないように、その生物と接触していき、言葉と音楽と卵を軸に繋がっていく。

イライザは、次第にその生物に心惹かれていった。
子どもの頃のトラウマで、声が出せないイライザは、今までの自分が誰かと心まで通っている実感を持つことができていなかったが、生物とは初めて心までもが繋がった実感を持てていた。

それは、ありのままの自分を見てくれるという安堵感と言葉はいらない、ただただ手話と音楽と見つめ合うだけで、お互いのことを認め合い、受け入れ合い、繋がることができているような実感を持つことができたからだ。

声を出せないことで、イライザを非難する者はいなく、仲の良い友人や隣人はいたものの、イライザが声を出せないことを知ってるがゆえに、踏み込まれない領域があり、ありのままをさらけ出せず、見せることができない自分が初めてありのままをさらけ出せ、それを含めて愛し合えているような感覚と衝動。
彼女は、もちろんその感覚と衝動を忘れることも止めることもできないし、代替できるものもない。
よりその深みにハマっていくのである。

そんな中、秘密研究所の中でもやはり階級社会であり、生物に指を噛みちぎられたストリックランドを中心に、理由をつけて、その生物を殺す話が裏では進められていた。

生物を愛しているがゆえに守りたいイライザと美しい生物がゆえに殺したくないと考えるホフステトラー博士。
生物を守るために行動を起こす。

人の人生は、たった一つの出会いや転機で大きく変わることがある。
愛することを知らない人が人を愛せるようになる。
誰かと繋がることを諦めていた人が誰かと繋がれるようになる。
自分をちゃんと見てくれているという実感を今まで持てていなかったものが持てるようになる。

平凡で楽しみなことがない淡々とした毎日に少しの彩りが添えられるだけで、その日常は自身の中で華やかに、そして充実して心が満たされるようになる。

そんな美しい物語を邪魔するかのように出てくる悪役、そして両者の静かだが確かに起こっている対立。

物語自体はとてもシンプルで、既視感があるように思えるが、見たことのない愛の表現と孤独だったもの同士が繋がることで満たされていく心の表現が本当に美しくて虜になる。

さらにそんなイライザを見て感化される周りの人たちの温かさや優しさも相まって、相乗効果を生んでいき、ラストに昇華されていく。

そしてラストで、愛をわからないもの同士が、愛を知り、愛に溺れていくかのように水中に飛び込む。

シェイプオブウォーターとは、水の中で表現される愛の形、水の中で柔軟に変わりゆく愛。
結局どちらにせよ美しい愛の表現に終着していく素敵な映画でした。

愛は、理屈で語れるものでない。
愛は、感情が溢れ出し、自分を制御できなくなる厄介なものであるが、それ以上の素晴らしさがある。

今作では、愛が物凄くアート的に表現されており、その要素をより増すように、音楽、美術(絵)、映画が作中に散りばめられており、それがラストの美しいアート的な愛に昇華されていったようにも見えた。

こんな世界観が一つの物語として生み出されていくのが映画のすごいところだし、この映画はそういう非現実の中の現実味もある世界観には浸らずにはいられない。

とにかく美しい。
迷っていたらぜひ鑑賞して欲しい作品です。