【映画】検察側の罪人 〜感情を軸とした正義と真実を軸とした正義の対立〜
一線を、越える。
正義は罪か?
犯人未明の殺人事件。対立する二人の検事。
正しいのは、どちらの正義かー
原田眞人監督最新作。
『別册文藝春秋』(文藝春秋)にて2012年9月号から2013年9月号まで連載された、雫井脩介による日本の小説の映画化。
冒頭の最上毅(木村拓哉)の言葉が伏線となって、検察官という職の難しさが明らかになる展開。
それぞれの異なる正義のもとで、対立する二人の検事それぞれの葛藤や行動、言動を見せ、独り善がりの行き過ぎた正義が暴走と化し罪になる。
でもそれも一つの正義なのかと、捉えられそうになる怖さ。
法律だけでは決して判断することのできない正義や正しさに揺れる両者の対立と法律だけで裁くことができない悪事に、正義と法律の脆弱性が露わになってくる。
ゴールが見えない、どうすればいいかわからない、でも答えを出さないといけない、そうしないと進まない。
感情が軸となる正義と真実が軸となる正義の対立…葛藤の世界に見事に引き込まれたような作品だった。
さらにそこに冤罪が起こり得る、背景や問題点についても触れられている。
原田眞人監督は、正義の二項対立、様々な正義を共存させる作品が多く、そのどれもに見応えがある。
今作も、正義の二項対立を描き、行き過ぎた自身の正義が、暴走に繋がり、罪となる可能性をも秘めていることを訴える。
そんなことが、さも当たり前かのような世界があることを、突きつけている。
さらに原田眞人監督といえば、歴史の真相から本質に触れて大事なことを訴えていることが多い。
今作は、太平洋戦争という誰かの行き過ぎた正義から始まった罪深き誤ちを空想させながら、現代にも起こっている行き過ぎた自分視点の正義について、警鐘を鳴らしているようでもあった。
それが一線を越えてしまう怖さが訴えられている。
正義の番人と言われている検察官は、普段触れていることの残酷さから、感情移入すればするほど、自身の感情を軸に作られた正義に振り回される。
本当に人の命は平等だと言えるのか、この世界の中での正義とは何なのか、を常に思い悩まされる作品。
その中でただひたすらに正論を述べ、理性的に動く橘(吉高由里子)が、自身の背景も含め、作品に更なる深みを与えていた。
100%の正義なんてない…この言葉が刺さる。
ただ法律に、ただ真実に、身を委ねられたらどれだけ楽なのか。
検察官をしていると、これだけ様々な事件に関わっているとやはり感情に揺れ動き、自身の正義を押しつけることになってしまうのか。
命題を問われ続ける物凄い作品だった。
P.S.
BGMはなんか邪魔が多かったような気がする。
敢えてなのか、何でああいうテンションのBGMを入れてきたのか。
個人的には、とことんまで暗く攻めて欲しかった。
木村拓哉、二宮和也、吉高由里子、松重豊の演技はそれはもう凄かった!
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