【映画】海辺の生と死 〜戦争下で人を愛することの覚悟〜
「海辺の生と死」
このタイトルに惹かれた。
満島ひかりが主演と知って観ないわけにはいかないと思った。
「むかーしむかし、世界中で戦争が行われていた頃の話です。」
満島ひかりのナレーションから映画がスタート。
しんみり、ゆっくりと戦時中の恋愛、生と死が描かれている。
これまで観た数々の映画とは違った視点で、「戦争」と「愛」が描かれていて、心に沁み渡ってきた良作だった。
何というか、「この世界の片隅に」のような感覚。
この時代の大きな世界の中で、こんな物語があったんですよと。
そう囁かれているような感覚。
まあでも「この世界の片隅に」がよすぎたから、こちらには少し物足りなさは感じた。
島独特の綺麗な海や大自然と元気で無邪気な子供たち、そして純粋な大人たち。
そんな島、島の生活と対比するように「戦争」という恐ろしいものが入ってきて、その当時の暮らしそのもののようにリアルに見えた。(もちろん体験したことはないが、なぜか本当にその時代のそこにいたような感覚)
軸になるのは、国民学校の教師トエ(満島ひかり)と海軍隊長として島にやってきた朔中尉(永山絢斗)。
国民全員が国のために死を覚悟して尽くしていくのが当たり前の戦争の中、そんな当たり前に疑問を持ち葛藤している朔中尉は、戦歌よりも島の唄を覚えたいとトエに伝え、そんな朔中尉にトエは惹かれていく。
決して「好き」や「愛している」という言葉が飛び交うわけではないが、徐々にお互いが惹かれ合って愛し合っていくのがわかり、それがわかるほど戦争が頭によぎってもどかしくなる。
この時代は、恋愛すること、人を好きになることに、こんなにも覚悟がいるのか。
本当に愛する人が、死んでしまうのが当たり前の時代。
愛することも怖くなりそうで、こんな末路になるのであれば、もう人を愛することを放棄した方がいいんじゃないか…
そう思うけど、それでもやっぱり人は人を愛してしまうんですね。
いや、こんな時代だからこそ、より愛し合いたいのか…
ついてはいけないでしょうか。
たとえこの身が壊れても、取り乱したりはいたしません。
相当の覚悟の上にあるのがわかる。
人が人らしく生きるために国があるはずなのに、人が国のために死ぬのが当たり前になる、そんな矛盾。
愛することがこんなにも難しく覚悟のいる時代背景。
それでも人を愛するトエ。
島の美しさと大自然、戦争の対比。
それをより明確に表現され、際立たせる間、音、唄、鳥の鳴き声。
155分と少々長く、大きな躍動や転換点があるわけではないが、全て観て感じる価値のある作品。
そして何より満島ひかりの演技が際立っている。
中盤からラストにかけての演技が特によい。
微妙な感情の揺れ動きが表情や仕草からすごく伝わってくる。
本当にその時代を生きてきた人みたい。
泣きの演技や覚悟が決まるときの演技。
どれをとっても、この作品のトエは確実に満島ひかり以外はない、と思えた。
どんどん引き込まれていきました。
でも脱がなくてもよかったなー。
彼女は脱がない方が魅力的だ。
P.S.
静かで起伏がなくて長いので、そんな映画が苦手な人には合わないかもです。念のため。
ちなみに隣で観てた人は所々寝てて若干いびきうるさかった。笑
そういえば、このレビューをインスタにも載せているのですが、満島ひかりさんご本人のアカウントからいいね!をいただけて、発狂しそうなくらい嬉しかったです。笑