シネマライフキャリア - Cinema Life Career -

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【映画】嘘を愛する女 〜愛とはその人を知り、全てを受け入れること〜

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嘘を愛する女」の「嘘」とは、過去を消した彼小出桔平(高橋一生)のことであった。
ヒューマンミステリーに該当するような作品であるが、評価が意外と低い印象。
理由は、どちらもの要素が中途半端であったからだろうか。
まあ確かに振り切れた方がより映画としてのおもしろみはあったかもしれないし、若干脚本が粗っぽい感じはあったが、個人的には、「愛すること、優しさに気づくこと、相手のことをしっかりと見ることの大切さ」という色んなメッセージ性が絡み合っている内容だっただけに、今作はなかなかの良作だと思った。

大手食品メーカーで働き、ウーマンオブザイヤーに輝くほどのキャリアウーマンで誰もが憧れるような女性像であった川原由加利(長澤まさみ)。
駅のホームで気分が悪くなったところを助けてくれた小出桔平のことを好きになり、一緒に暮らすことに。

一緒に暮らしていく中で、彼のおかしい点(携帯を持たない、親に会おうとしないなど)が気になりつつも、彼の優しさに惚れていた。
母と会う約束をしていたある日、小出桔平は約束の時間に来なかった。
くも膜下出血で倒れてしまい、そのときに警察から小出桔平が偽名であること、住所以外の彼が装っていた個人情報が全てデタラメ(嘘)だったことが発覚する。

「なぜ彼は嘘をついて生きているのか」、どうしても彼の過去が気になった由加利は探偵海原匠(吉田鋼太郎)と木村(DAIGO)に彼の過去について、調査を頼むことに。
その中で、出てくる彼が隠れて行っていたことや彼が書いていた小説。
過去を探るヒントが至るところに散りばめられており、小説の舞台となっていた瀬戸内にまずは由加利一人で行くことに。

小説に書いてある灯台などの印をもとに、彼の過去を辿ろうとするが、なかなか核心にたどり着かずに、ただただ時間だけが過ぎる。
その過去を探ろうとしている間に、蘇る彼との思い出や嘘をついていた彼自身。

思い出を反芻すればするほど、自分はなぜこんなことをしているのか、自問自答するようになり、核心に迫るか迫らないか、で海原を困らせる。
小出桔平の過去を探る中で、振り回していた海原に自分のことしか考えていないこと、人の触れたくない過去を否定されたことに対し、海原が「よく5年も小出桔平は川原由加利と過ごしたな」と言われ、自身が今までの生活の中で、自分のことや仕事のことしか考えてなかったこと、小出桔平の優しさに甘えていたことを悟り、悩んだ末に彼の過去の核心に迫る決意をする。

小出桔平は、過去に結婚をしており、子供が一人いて、自らが家庭を顧みずに、仕事中心に生活していたがゆえに、妻が精神異常で子供と無理心中をしてたのであった。

隠れて書いていた小説は、実は自分と作る家族の理想像だったと知った由加利は、彼の考えていたことを何一つ知らなかったこと、そんな理想を持っていてくれたことや自分を見てくれいたことに感涙した。

小出桔平は、今作で自分の考えていたことを、由加利に対して、ほとんど告げることをしていなかったが、唯一放っていたことが、仕事をし過ぎていて帰りが遅くなっていることに対しての心配であった。
それは、まさしく小出桔平自身が経験した過去と照らし合わせているような感じがしていて、仕事が忙しそうであるがゆえに、言いたいことが言えなくなっている過去の自分の家族を投影していて、それを避けようと彼なりに試行錯誤していたんじゃないかと思えた。

そんな小出桔平の過去や自身を思っていることをちゃんと知れた由加利は最終的に、愛がより深まり優しく支えてもらっていた彼のことをしっかりと看病するようになる。

消し去りたい過去を消し去って生きていくことは、そんな過去を持っている人にはありがちだと思うし、そんな自分が幸せにのうのうと生きてもよいものなのか、葛藤に揺れるからこそなかなか伝えられないことがある現実。

それでもやはり、自分を知ってもらうために過去を明らかにしたり、その過去の誤ちを受け止めてもうしないように努めたり、思っていることをしっかりと伝えたり・・・
そうすることによって、関係が離れていくのではなく、むしろ深まっていくことこそが、本当の愛なんだなという実感が湧いたような感覚がある。
ユリゴコロ」の男女を変えて、軽くして、ミステリー要素を引いたような作品。

人は何が変わればその人じゃなくなるのか、その人として愛せなくなってしまうのか、そんなことについても不意に考えていた。

重すぎず時折過去を反芻しながら淡々と大切なことを訴えてくる今作は、じわじわくる良作でした。

長澤まさみは「散歩する侵略者」と今作のような「それでも愛せるか」な妻役がとても板についてきていると思う。
このような役柄で、彼女の右に出る女優はなかなかいないだろうと改めて思った。
そして、吉田鋼太郎がかなりいい味出してた。

P.S.
川栄李奈黒木瞳がいてもいなくても役だった感じが否めない。
監督的にどうしても入れたかったのかなー。