シネマライフキャリア - Cinema Life Career -

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【映画】希望のかなた 〜損得なく誰かのために〜

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みんなで、救う。

難民問題が各国で議論される中、この問題はある意味国を越えて、民衆をも交えて考えていくべき問題かもしれないと今作を鑑賞して思った。
トランプ大統領には、今作をどうか鑑賞して欲しい。

今作は、世界でも大きな問題として挙がっている難民問題について、国家(組織)としての対応と人(国民)としての対応をうまくわけて描くことにより、ユーモアを交えて社会風刺しながら、結果的にフィンランドという国に住んでいる人たちの温かさとカウリスマキ監督自身がこの問題に対してのこうあるべきを示している傑作。

さらに、会話から織りなされるメッセージ性のみならず、時折ターニングポイントで流れてくる音楽が映画自体に彩りを与えて歌詞に意味が深く上乗せされていて、演出もすごくおしゃれで本当に美しい映画だと感じた。

一見重くなりそうなテーマで、難民問題となると、国家に抗えずに苦しむことから、その問題の真相をただ露わにしていく作品は多いと思うが、今作のように住んでいる人と対比することで、人の温かさと難民問題は組織だけでなく、民間をも巻き込んでいくことの大切さを訴えている。

感性が本当に素晴らしく、映画としては短い尺の中で、こんなに綺麗に収められるのにただただ感服。

ストーリーは、内戦が激化する故郷シリアを逃れた青年カーリドが、生き別れた妹を探して、偶然にフィンランドに流れつく。
家族をシリアで失ったカーリドは、妹を見つけ出し、妹の未来を明るくすることだけが生きがいとなっていた。
ただし、妹はどこにいるのかもわからない状況。

まずは、カーリド自身が、警察を通して難民申請を出すが、その申請は政府に受け入れられず、カーリドは収容所から脱出することを決意する。
そんなカーリドを、かくまうそれぞれの人たち。
かくまう理由なんていらなくて、ただ近くにいる人が困っているから、未来を希望の光で少しでも灯したいからと、様々な手を尽くしてカーリドに協力する。
初めに救いの手を伸ばしたのは、レストランオーナーのヴィクストロム出会ったが、彼も妻という大切な存在を離婚という形で失くしていて、家族の存在の重さや大切さを知っていた。
そんなレストランの中でかくまっていた人たちとカーリドは家族みたいな関係になっていた。素敵。

そんな中でも、理想だけを描こうとするのではなく、ネオナチに襲われたりと、現実的な負の部分をしっかりと盛り込んでいるのもよい。

レストランの経営がうまくいかない中、商売繁盛を狙い手を出した寿司屋事業は日本食を映画の中に取り入れられていた嬉しさと他国文化を取り入れようとしてうまくいかないそんな浅はかさな決断もよい感じに笑いを誘ってくれる。

最終的に、難民仲間に妹の居場所を教えてもらい、ヴィクストロムらの協力でカーリドは妹と再会、目的を果たすに至る。
だが、安心しきったカーリドをいつぞやのネオナチの一員が襲う。
刃物で深い傷を負いながらも、カーリドは妹を笑顔で送り出し、映画はエンドを迎えた。

冒頭にも書いたが、難民問題を軸に国家そのもの対応を風刺しながら、人の温かさに触れられる、それでいて演出含めておしゃれ、まさに映画だからこそなし得ることができるいいとこ取りの傑作だった。

組織になると(特にそれが大きくなればなるほど)、その中にいる人がルールやら、立ち振る舞いやら、建前やらで、無慈悲になっていくが、それは組織の中にいるからこそで、人の本質は本当は温かさに溢れている。
人はそういう生き物である。そう信じて疑わない。
色んな人が近くの人のために協力できるような未来は明るい。
そう信じ切れる世の中こそ、まさしく「希望のかなた」。

2017年に鑑賞できていたら、確実にベスト3に入っていた。
カウリスマキ監督の作品をもっとたくさん鑑賞してみたくなった。