シネマライフキャリア - Cinema Life Career -

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【映画】殺人の追憶 〜感情に支配されることの怖さ〜

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これはすごい。
映画としての完成度が高すぎる。
連続殺人事件をベースにフィクション仕掛けで描いているものの、特にこの時代に蔓延しているであろう、警察の闇や刑事の愚行、悩み、葛藤、心情を見事なまでにリアルに、生々しく、痛々しく、描き切っている。

未解決事件なだけに、解決しない展開にもやもやはするが、ラストシーンがゾッとして秀逸で、それがまたよかった。

顔のわからない犯人を追うことになる刑事たち。
犯行は秀逸で手がかりは少なく、全員が同じような殺され方をしていたが、なかなか解決のきっかけを掴むことができない。

犯人を特定することができず、連続して殺人事件が起こり、その犯人と進展しない事件の真相に、苛々していく。
決定的な証拠がない段階では、犯人を予測程度にしか追うことができず、被害者の身内に当たっていき、その人をどう犯人にするのか、という観点にだんだん変わっていってしまう。

いきなり犯人としてのレッテルを貼られ、していないことをしたと発言しろと強要される被疑者。
刑事側の苛々の捌け口になっているだけで、被疑者を見てられなくなる。
この時代、いかに理不尽に取り締まりが行われていたかがわかる。

刑事の勘と苛々の捌け口として理不尽な取り締まりを受けるなんてもういい加減にしてくれ、となる。
現実で勘なんてものを信用しないでくれ、ファンタジーな刑事ドラマか。

被疑者がその後も何人か出てくるが、解決しないまま、話が展開されていく。
日を増すごとに溜まってくる苛々と葛藤。
刑事たちが平穏を保てなくなってきていた。

そこで決定的な証拠をとれそうなとき、拷問を受けた被疑者が重要なポイントになりそうだったが、以前受けた拷問のこともあり、優しく歩み寄ろうとしても、殺されると勘違いして、逃げられる。

完全に刑事たちの自業自得である。
あんなにひどい拷問を受けた相手に、また近づかれたらそれはあんな感情になるのは当たり前である。
逃げる被疑者が、鉄道レールに入り、電車に轢かれて亡くなってしまう。

まさに間接的ではあるが、刑事側が殺人を犯してしまったようなものである。

さらに苛々が溜まっていく。
狂気が増していく。自分の手で人を殺しそうになる。

怒りに感情を支配されそうになったとき、人は狂ってしまうし、常軌を逸した行動を起こしてしまいそうになる。
すれすれの状態で何とか被疑者を殺さずに済んだが、結局その被疑者も犯人とは特定されなかった。

解決しない殺人事件の中で、次々に連続殺人が起こり、八方塞がりになったときに、揺れ動く刑事たちの心情やとってしまう行動が怖い。
これが事実だとしたら非常に危ないのではないか。

怒りや苛々の感情は、その人を狂わせることがあることに怖さを感じ、やっぱりできる限り持ちたくない感情だと思い知らされた。
感情に支配されるのは危ない。
人間の不完全さがあまりにもリアルに描かれていて、なかなかにきつかった。

でも映画としての完成度も高く、このリアルの追求こそが、韓国映画のよさであり、凄さである。
非常に衝撃を受けた作品の一つとなりました。