シネマライフキャリア - Cinema Life Career -

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【映画】早春(DEEP END) 〜死ぬほどの恋に落ちたんだ。〜

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死ぬほどの恋に落ちたんだ。

演出やストーリー展開の仕方を間違えたらただのストーカー映像になってしまい兼ねないが、設定と演出とストーリー展開により、しっかりと一つの恋愛の形が描かれている。
こんな恋愛の形も美しいと錯覚に陥りそうなほどの描き方だ。

ロンドンの公衆浴場に就職した15歳のマイクは、そこで働く年上の女性スーザンに恋心を抱く。
だが、婚約者がいながらも、別の年上男性とも付き合う彼女の自由奔放な恋愛、性生活を知るうち、マイクの彼女ヘの執着は徐々にエスカレートしていく。

スーザンは美人で、マイクにとっては高嶺の花みたいな存在ではあり、どこか自由で危なげのある彼女に対して、お節介じみた自分よがりの善意を余すことなくぶつけてしまうのは、若さゆえの周りが見えなくなる典型的な例の一つである。

近づこうとするほど、離れていくような感覚、でも未熟で婚約者にも別の年上男性にも敵わないと察しているから、どのように行動したらよいのかわからない。
それでも制御できない今作でいう死ぬほどの恋は、悪戯と相まって予期せぬ展開へと進んでいくことに。

冒頭に流れていた歌やシーンが、最後に繋がってくる展開はやはり映画として素晴らしいし、設定において恋愛未経験の未熟な若者と美人で経験豊富な女性を上司部下にすることで、非現実っぽい現実をうまく作り上げ、キャストや展開において、ただの欲望が抑えられないストーカーを辿る映像になり得そうな内容を、絶妙におしゃれで美しい映画へと終着させていく。

時間も90分くらいが確かにちょうどよいような内容だし、無駄なくうまくまとまっていて、何を見せられているんだという感覚も全然なかった。

間に入ってくる白の要素としての牛乳、消化器の中身、雪の中でダイヤを探す点などは、まさにマイクの欲望を客観的に表現したように思えたし、そこに対比するかのようにホットドッグの上に乗るケチャップの赤とマスタードの黄、壁に塗られていた赤いペンキとスーザンのジャケットの黄の要素が、最後のスーザンの後頭部に当てられた黄色い電球と赤い血に昇華される。

最後のシーンはあえてその後を描かないように視聴者に委ねているような感じにはなっているが、そういった色の伏線からおそらくそういう結末なのだろうと感じさせられる。

社会や人間関係の作り方を知らない若者の高嶺の花な恋が、危うげな彼の心に火をつけてしまい、思わせぶりなスーザンの行動はさらに彼の心を動かし、暴走のきっかけを作ってしまった。

温度感の違いと双方の当たり前の差や価値観が違うことにより起こる予期せぬ出来事について上手に表現されているが、予期せぬ結末に怖さすら感じた。

クーリンチェ少年殺人事件に、重さと長さと時代背景と周りの人の描写を引いて、2人の世界にして、最後の結末は同じというような作品。
観ておいて損はないと思います。

P.S.
邦題を「早春」としたセンスが素晴らしすぎる!