シネマライフキャリア - Cinema Life Career -

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【ドラマ】それでも、生きてゆく 〜被害者家族と加害者家族〜

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それでも、生きてゆく


希望は、あるのだろうか。僕に、僕の家族に。

1996年、友だちが人殺しになった。殺されたのは僕の妹だった。

明日はあるのだろうか、私に、私の家族に。

2011年、私の兄に妹を殺された人に出会った。彼は兄への復讐を誓った。

復讐は果たされるのだろうか。許すことは、できるのだろうか。

壊れた家族は再生されるのだろうか。愛は人を変えることが、できるのだろうか。

どんなに悲しいことがあっても、どんなに辛いことがあっても、それでも、生きてゆく

 

今更ではありますが、以前からとても気になってたのと、周りの方々からのおすすめもあり鑑賞。


ある事件によって悲しみを背負った男女の出会いをきっかけに、それまで時間の止まっていた家族たちが悲劇を乗り越え、明日への希望を見出そうと懸命に生きる姿が描かれている作品。


ある殺人事件の被害者の家族と加害者の家族が繋がっていき、それぞれが事件に向き合っていきながら、苦悩を乗り越えていく。

フィクションではあるが、どちらもの家族の苦悩や悲しみや怒りや数え切れないほどの様々な感情が非常に生々しくリアルに描かれていた。


被害者側の家族は、加害者である三崎文哉(風間俊介)の行方を知らずに消化し切れないそれぞれの思いを持ちながらも隠しつつずっと生きていて、それは加害者への恨みから加害者側の家族に嫌がらせをすることで、割り切りをつけるしかない状態であった。


かたやで加害者側の家族は、家族であるからこそ人を殺した文哉を簡単に恨むことはできずに、被害者側の家族に対して後ろめたい思いを持ち続けながら生きてきた。


肝心なところに向き合うことができない両家族であったが、被害者側の次男深見洋貴(瑛太)と加害者側の次女遠山双葉(満島ひかり)が出会うことで、徐々に動いていくことになる。


忘れて楽になりたくてもできるわけがない。

当人同士にしか決してわかり合うことができないものがそこにはあって、そこに観ている側の自分が入り込むことなんてできるわけがなかった。

どうしたらいいか本当にわからないとはこういうことで、逃げたくなるようなことに溢れてる世界であったが、それでも逃げずに向き合い続けることで少しずつ正気と自分の人生を取り戻しかけていく各位。


向き合いたくなかった文哉の出所後から今に至るまでの生活と反省の有無、そして文哉の過去。

受け止め切れないほどのあらゆることが恨みつらみ怒りへと昇華しそうになるところを、それぞれが思い止まりながら、心を通わせながら、愛し合いながら、ときに背中を押し合いながら、確かに全てに向き合った上で自分の意思で決めた希望の明日を迎えるために日々を生きる両家の姿に感銘を受けた。


なぜこんなに苦しいことしかないのか、苦しい物語が生まれるのか。

それは違う明日を作っていくことへの希望の物語でもあるから。

自分だけじゃないと思わせてくれる勇気をもらえる物語でもあるから。


そして今作は、被害者側の家族と加害者側の家族がわかり合えるのか、心を通わすことができるのか。

どれだけ悲しくて辛いことが起き続けてもそれを乗り越えていけるのか。

ここに中途半端ではなく、しっかりと切り込んでいってるのが凄かった。

坂元裕二さんやスタッフさんのただならぬ思いを感じ取れた。


憎しみからは何も生まれないとか復讐からは何も生まれずに、それが連鎖になるだけで、その呪縛から解放されるわけではないことなんて、頭ではわかってしたとしても、そんな単純なことあるわけがない。

今作を観てそれを強く感じた。


全てを誰かが背負わなくてもよいし、全てに向き合い続けなくてもよい。

それでも、それすらも自分の意思で決める人生ならそれもまた自分の人生を前向きに歩んでいくことに繋がっていく。


本当に優しい心を持ってる人たちだから、反省や後悔を持ち続けながら、ずっと幸せになってはいけないと、やりたいことをやってはいけないと思い続けながら人生を歩もうとする。

でもそういう人たちだからそれぞれ自分を責めすぎずに、人生を前向きに歩んでいって欲しい。


それが叶ったように見えたからラストは嬉しくて希望でもあり、初めて悲しい涙じゃなくて、よかったと安堵の涙を流すことができた。


でも洋貴と双葉が違う立場で違う出会い方をしていたら、きっともっと幸せになってたんだろうなーと。

あんな状況でもユーモラスにお互いのことを考えて会話をし合えるって素敵すぎた。


こんなにずっと心揺さぶられ続けるドラマは初めてかもしれない。傑作。


P.S.

キャストの演技の前評判は知っていたものの、ここまでとは思ってなかった。

やっぱり満島ひかりの演技は本当によくて好きで、それ以外にも特に瑛太大竹しのぶ風間俊介時任三郎風吹ジュンがそれぞれによくて、その中で1人潔白に美しく輝く倉科カナもまた印象的だった。

あと、山本舞香がちゃっかり双葉の小学生の頃で出てるのも注目。

小田和正の「東京の空」も辻井伸行の挿入曲もとてもよかったです。