シネマライフキャリア - Cinema Life Career -

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【映画】ある船頭の話 〜静かなる問題提起〜

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ある船頭の話

一艘の舟。すべてはそこから始まる。

日本映画らしい奥ゆかしさととてつもない映像美に心奪われた。
物凄く綺麗で繊細。

ともすればこの映画の静けさと穏やかさから、上質な眠りに誘われそうな感じがするが、要所要所にしっかりと転換点を入れてきていて、物語としての意味深なシーンが散りばめられてくるから、この雰囲気がずっと続いても飽きずにじっくりと観ていられる。

そこにしっかりと映画としての意味をも成していて、考えさせられる余地も与えてくれているので余韻が残る。
初監督にしてここまで達観した作品を創り上げられるとはオダギリジョーはやっぱり凄いし人として尊敬。
自らが表現したいことと思考、感情を上手に融合させてスクリーンに余すことなく映し出すことができているような感じがする。
初監督にして完成度が高すぎる。

時代が大きく変わる文明開化期の日本のとある山村を舞台にし、そこで村と町を繋ぐ渡し守をしているトイチ柄本明)を軸に、真に人間らしい生き方を問いながら、すぐ便利になっていく世の中であるからこその原点回帰、温故知新の大切さを訴えてきている。

原点回帰と言ったり、このような作品を鑑賞しておきながらも、どうしても便利なものは使いたくなるし、流行りには敏感に反応してしまうが、あらゆるものを享受するときに、そうすることで人間らしさが失われないかどうか、それそのものに人間らしさを感じられるかどうか、それが普及していくことでどのような世の中になっていくのか。
そういうことをしっかりと考えながら取捨選択をしていきたいと思った。

人間らしい生き方は不変であると思うし、それって人間として生きていく上で最も大切なことであるから、それを捨ててまで何かを享受することも新しく何かをすることもしたくない。

川と風が伝統的な暮らしと革新的な暮らしを分断し、前者から後者へ流されていかざるを得ない世の中のメタファーになっていて、この時代と現代の風潮を上手に繋げている。

人間らしさとは誰かのために何かを与える(誰かの役に立つ)ことで、人に必要とされることと自分は解釈したが、この映画の奥ゆかしさと明確に答えを出さない展開、トイチを演じる柄本明の演技から、解釈は人によって違い、いく通りにも広げられるものとなっている。

原点回帰としては、生まれながらに自分以外のためを思って行動することができる、自分以外を思いやることができる生物としての人間だったのに、という痛烈なメッセージ性を感じるシーンがあり、温故知新としては古き良きものから新しいものを生み出すことをしないと初心を忘れてしまうという危機感を感じるシーンがあった。

便利になるにつれて過ごしやすくなる反面、人と人との触れ合いは少なくなり、いそいそとした人が増えて、余裕がなくなり心は荒んでいく。
そして無駄に求めるものが多くなる。
源三(村上虹郎)の変化がそれを表しているようだった。

 

トイチが渡し守を通して作っていた人と人の繋がりとユーモアと心の余裕。
それが実は人間らしく生きていく上ではとても大切だった。

トイチがラストああなっちゃうのは何とも救いがなくて嫌だなーと。
渡し守だからこそ享受できるもの、伝統的な(昔からある)ものだからこそ享受できるものも大切にしていたい。残っていて欲しい。

前半は時間がほのぼのと流れていて、自然を純粋に楽しみながら安心して観ていられたが、中盤から後半にかけてはだんだんと重くなっていき、総じて考えさせられることが多かった作品だった。

今後も監督としてのオダギリジョーにも注目していきたい。

P.S.
こんな自然を綺麗な映像で見せられると、自然での自給自足の生活というのもやっぱり憧れる。
将来的には移住したい。
とりあえず阿賀町と三島町に行ってみたい。

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