シネマライフキャリア - Cinema Life Career -

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【映画】犬猿 〜兄弟姉妹だからこその嫉妬、羨望、愛憎〜

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設定は少々荒削りというか、大袈裟な感じはするけど、兄弟姉妹の似ているようで違うくて、距離が近くて関わらざるを得ないときに、お互いに相手に思うことや比較して自身をどう考えているか、が上手に描かれている。

今作では、「兄弟姉妹=お互いをよく知り距離感が近いこと」が前提で話が進められている。
それでも今作みたいなことって、何も兄弟姉妹という間柄だけでなく、他の人間関係においても、距離感が近ければ同じことが言えるのではないだろうか。

距離が遠い存在になればなるほど、その人に対しての嫉妬や羨望はあまり湧かない気がする。
それなのに、距離が近い存在においては、なぜかそういう邪魔な感情や思考が湧きやすいのは、比較しやすいし、客観的に見ても比較されやすいからだということがわかる。

【兄弟】
破天荒で喧嘩が強く周りからも怖れられていて自由に生き過ぎているがゆえに周りに迷惑をかけている兄金山卓司(新井浩文)と兄とは正反対な神経質で真面目な性格で人にも優しく気が遣える弟金山和成(窪田正孝)。

【姉妹】
勤勉で頭がよく真面目で要領よく何でもこなせることができるが、融通が効かずに全てを自分でこなそうとし、見た目があまり良くない姉幾野由利亜(江上敬子)と姉のように頭がよくはないし、要領よくこなすことはできないが、容姿端麗でスタイルが良く、世渡り上手にチヤホヤされている妹幾野真子(筧美和子)。

兄卓司は、就職をせずにハイリスクハイリターンでお金を稼ごうとしていて、弟和成に度々家に押しかけられたり、金を貸してくれとせがまれたりしている。
弟和成は印刷会社で営業マンとして地道にお金を稼いでいて、真面目に働かずに自分の自由を阻害してくる兄に対して、嫌悪感を抱いていた。

姉由利亜は、和成が頻繁に仕事を依頼する、小さな印刷所で社長をし、妹真子を雇っていたが、仕事も家事もできないのに、可愛いだけで周りからはチヤホヤされていることに嫉妬と苛々が募る。
妹真子は、仕事や家事ができずに頭も要領もよくないことに劣等感を感じつつも、融通が効かずにモテない姉のことを小バカにしていた。

話が進むにつれて、エスカレートしていくそれぞれの嫉妬と羨望と憎悪と嫌悪感と苛々。
距離が近いからこそ、それぞれのことを知っていて、だからこそ勝手に比較して、相手より上であることを自身で感じておきたいがために、劣等感を感じる部分を隠して、自分が勝てていると思ったことで、相手をけなそうとする。
そこには、何とも嫌な人間らしい部分を見せられているような感じがするが、兄弟姉妹だからこそこうなってしまうのかなとも思ったり・・・

正直、自分も弟がいて、弟のことはよく知っているものの、お互いそこまで干渉し合わないこともあるし、小さい頃から今まで含め、特に張り合っていたこともそんなにないので、全く今作と同じような関係ではない。
それはそこまで意識をしていないのもあるけど、離れているとはいえ弟からの自分の見え方を、色んな人を通して客観的に知っているからでもあると思うし、やっぱり程よい距離感が適切なんだなとも思う。
(だから弟と一緒に暮らすのは自分には絶対無理だな。笑)

兄弟姉妹という関係が厄介なのは、幼い頃から他者から無駄に比較されることが多いからに他ならない。
また、競争社会においては小さい頃から優劣がつけられて、何事においても優秀な方が褒められるし、そちらの方が嬉しいし気持ちいいという植え付けがなされるから、そんな中で比較されるなら絶対にその一番近い存在よりは上に立っておきたいと考えるのは人間の性というものだと思う。

そんな厄介な関係だからこそお互いが直接お互いの良いところを認められずに、良くない点を探してはそれを突き、上に立つために相手の大切なものを奪ったり相手が落ちていくことをいつの間にか望んだりしてしまう。
前半から中盤にかけては、ひたすらにそんなことを表現されているシーンの横行であった。

ただし、兄弟姉妹という切っても切れない間柄において、そんな小さいことは考えるだけ無駄であることが終盤にかけて伝えられている。
それは、兄と姉がそれぞれ亡くなる寸前にふと思い起こされた過去の反芻があった。
小さい頃ってお互いこんな関係だったっけと。
逆にお互い意地を張らずにお互いを助け合っていたし、優劣なんて考えずにお互いがお互いを応援したり、良いところを言い合ったりなんかもしていた。

いつの間にか敵対視してしまっていて、いつの間にか相手の嫌な部分しか見えなくなってきていて、いつの間にかお互いを認め合うことをしなくなっていた。

兄弟姉妹という切っても切れない近しい関係において、お互いに意地を張り合ったり、プライドを持ったり、無駄に嫉妬したり羨望するのはやめて、お互いを認め合いながら頼り頼られで生きていこうよ、というメッセージ性があった。

あと、ないものねだりをしても仕方がないので、ないものはそれとして受け入れるか、それを掴むために行動を変えるか、の二択しかない。
そんなときにプライドはただただ邪魔になるだけである。

結局最後は、やっぱり「犬猿」で終わるんかいwって感じでしたが、最後の「犬猿」な雰囲気は愛らしさと憎らしさのバランスがとても良い感じで、健全だったなーと思ったので、終わり方は個人的にかなり好みでした。

兄弟姉妹を考えるいいきっかけになったし、何よりもおもしろかった。
配役もすごくいいです。
ニッチェ江上敬子かなり演じれてて正直驚いた!
窪田正孝は相変わらずの真面目役、新井浩文の安定の破天荒自由人役、筧美和子はあざとさといやらしさとエロさ全開。

𠮷田恵輔監督と言えば、「ヒメアノ〜ル」をまだ鑑賞していないので、そちらもぜひ鑑賞したい。

P.S.
設定が設定だけに、兄弟側よりも姉妹側に共感、感情移入する人が多かったんじゃなかろうか。