【映画】渇き。 〜あらゆる狂気の共存〜
渇き。
愛する娘は、バケモノでした。
狂気の沙汰。全員狂ってる。もう振り切れ過ぎてて救いなんてものは全くない。
愛の方向性を誤ったことから来る狂気、自分の非を認めず他責にし続けてあくまで自分のせいであることから逃げ続ける各位、弱い者にやっと希望が見えてくるユートピアからの墜落、報復…意外と現実と結びつけられる要素ありきで全てのことが起こってくるから怖い。
全然緩急がなくて最初から常に高速スピードのジェットコースターに乗ってるような感覚でしんどかった。でもおもしろかった!
時間軸めちゃくちゃな物語設計の中に、何かとベースになってきてるのが、愛情表現の間違いから狂う人間の末路である感じがする。
あくまで加奈子は父親から受けた暴力による愛情表現を、自分を最大限に活かしたことにより、親を超越した形で色んな人にぶつけていって、とんでもないことに発展していった。終始そんな感じ。
バケモノにしたのは他でもない父親の刑事であるが、それを全く認めない父親に報復が降り続けていく。
されたらとんでもなく嫌なことをされるけど、それを超越する優しさを与えられたり魅力に惹かれすぎることで、周りが見えなくなり感覚が麻痺し、いわば洗脳状態に陥る。
それは余裕や拠り所がない人ほど深みにハマっていく。
離れたいのに好きになってしまい離れられなくなる。
そんなことをやってのけるあらゆる人の偶像である描かれ方をしている加奈子。
今作は大袈裟に描かれてるから現実味がないけど、直近だとモンスターハウスのクロちゃんを好きになってしまうこと(やらせじゃなかったら)、悪しき宗教にハマってしまうこと、好きな人のためにお金を余すことなく投資してしまうことと近しい原理だと思う。
理屈ではわかってたとしてもそれを感覚が超越してしまう、もしくは麻痺してしまって合理的な判断ができない事例じゃないかと。
それは何かしらの卓越した言葉に表現できない何か何だろう。
まあこれ自体ファンタジーだから一緒にするのはよくないか。笑
なぜか全員加奈子に振り回される。
それだけの不思議な魅力を持ち何を考えてるか読めない加奈子役を小松菜奈、やさぐれ暴力刑事であり加奈子の父親でもある役を役所広司とこれ以外あるかと言うほどのキャスティングが絶妙にハマっていてよかった。
役所広司は、孤狼の血でも思ったけど、見境いがつかないやさぐれた暴走刑事やらせたら右に出る者がいない。ぶっ飛び過ぎてる。
それ以外にもオダギリジョー、妻夫木聡、二階堂ふみ、橋本愛、清水尋也とキャストの演技の引き出しが凄まじい!
内容は好き嫌いわかれるのでどうあれ、この豪華キャスト陣の類い稀ないそれぞれの引き出された演技を拝むだけでも鑑賞する価値のある映画なんじゃないかなと思えた。
キャストやっぱり大事やなーと強く思える作品でもある!
こんなにもあらゆる人間の要素を全て極端に爆発させて映し続けられてるので、もちろん綺麗に収束するはずもなく、もう何が起こってるのかわからない中で、いきなりミステリアスに加奈子の末路が明らかになる。
ミステリーではあるが、犯人がわかってスッキリすることは全くなく、後味の悪さが残る作品であった。
この衝撃はおそらく当分消えない。
それにしてもこの内容でよくこれだけのキャスティングができたなーと。
中島哲也とは何者なんだ…!!
カルトではなく、表現者として昇華される方で本当によかったです。