【映画】七つの会議 〜正義の体現〜
七つの会議
正義を、語れ。
池井戸潤原作の映画化。
ある社員が皮切りとなり、組織全体に蔓延る同調圧力が招く不祥事の連鎖を断ち切っていく物語。
エンターテイメントとしてのおもしろさがしっかりとあり、それでいて社会派要素もしっかりとある内容は健在で、今回も痺れました!
最近次々に大手企業の不祥事が明るみになってきているが、そこには間違いなく今作の主役のような組織に依存せずに組織に所属し、倫理観を加味した上で、自分の正義を軸に、組織を俯瞰(よい意味で客観視)しながら対峙して働いている八角(野村萬斎)みたいな人たちがいるからではないだろうか。
時代が流れるにつれて、そもそもの働き方や働くことに対しての考え方が変わってきているのに、未だ組織のあり方や意思決定の形を変えられず、盲目的な売上至上主義的思考でかつ、根性論を叩きつけている会社があれば、そろそろ変革のときであろうことが、今作を観たらよくわかる。
また、倫理観を外してでも出世を目指したいという人がいるとしたら、一度立ち止まってこの作品を観て欲しいなーと切実に思った。
どのような不祥事が暴かれようとしているのか、をイメージしてながら追っていくのも今作の楽しみの一つとしてあるので、そこは明るみにしないようにします。
組織の不祥事を無視できない人たちと不祥事に巻き込まれて反論することができずに遂行してしまった人たちと何もわからず勘違いして正そうとしている人を陥れようとしてしまう人たち、そしてその倫理観なき意思決定をしてしまう人たち。
まさに旧来型のシステマチックで人情味のない組織をそのまんま形にしたような老舗メーカー企業が舞台となっている。
そもそもこれはフィクションという認識で鑑賞してたけど、このような会社は普通にありそうで怖い。
もちろん今作では、倫理観なき意思決定をする人たちが悪なわけではあるが、そこに歯向かえずに出世争いに対しての同調圧力に負けてしまう現場の実行者も、また悪となってしまうことがしっかりと描かれている。
「言われたことをやっただけ」で、責任放棄することは通用せず、その連鎖をどこかで断ち切らないと組織は改善されずに被害を受ける人が出てしまう。
自分がこのような環境とは無縁な人生であり、むしろその人生を自らで選んで生きているので、あまり偉そうなことは言えないけど、組織にハマりすぎて盲目的になり、善悪の判断を自身で下せなくなっていくのはとても危険であり、もはやこのような組織は悪徳宗教(例えばオーム真理教なんか)と何ら変わりがない。
これが大きくなればなるほどの最たる例がヒトラーやスターリンの大惨事である。
表向きに崇高な理念を掲げていたとしても、それが本当の意味で体現されようとして、行動にまで落とし込まれているかは本当に重要だと改めて感じた。
1つの会社に忠誠を尽くし、出世を目指すことこそがサラリーマンの生きる道であり正しさであるという盲目的な正義のその根幹となっているのは、紛れもなく義務教育時代の階層主義、競争主義があると思う。
自分の承認欲求を満たすための方法が、もうそれしか見えてないし、それ以外のことをそもそも学べてない。
そちらの方が楽だから選んでしまってる人も本当に多いんだろうなと思う。
今作は、社会や組織の間接的な被害者みたいな人がたくさんいて心苦しい。
事なかれ、責任のたらい回しが至るところで行われ、組織の中の権力に押し潰されていく人たちが出てきて何ともな感じ。
結局出世に興味のない組織に依存しない自分の軸で生きられる人が強いし、人生の豊かさを持ちながら生きていける。
こういうとき、全員でストライキできたらよいのに。
まあ今は情報の出所が隠しきれないほど色々あるから、自然とこういうのは淘汰されていきそうでもありますね。
組織はトップにより左右されてしまう節はあるが、決してそれだけでなく倫理観を軸とした善を持つ一人ひとりが行動を起こすことで、変えられる世の中にもなってきてることが作品を通して感じられた。
もちろん、展開にも二転三転しっかりと転換点があり、エンターテイメントとしての見応えもあった。
そして、八角が正義について語るエンドロールシーンには、何とも言えない後味の悪い余韻が残った。
P.S.
さすがの池井戸潤原作の豪華キャスト陣の揃い踏み。
ちょい役もいちいち豪華で、安心して観ることができました。
最近読んだ本「世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか」とあわせるとより深まる。
直近のデイアンドナイトと比較すると善悪がはっきりしてるし、悪も悪を自覚してるからわかりやすく入って来やすい。
倫理観を軸にしたそれぞれの真善美をもとにした自己実現を誰もが成し遂げながら生きられる世の中に変わっていけるのか。
10年後にはこのような作品が時代遅れと言えるまでになったらいいですね!