【映画】君の名前で僕を呼んで 〜愛の美しさ〜
君の名前で僕を呼んで(Call Me By Your Name)
何ひとつ忘れない。
2018年観たかったけど観れなかった作品を鑑賞しよう第二弾。
2007年に書かれた小説「Call Me By Your Name」を原作としていて、原作は1987年の設定だが、エイズが社会問題になる前を描くため、1983年に設定を変え、映画化された作品。
これが洋画における詩的で情緒的な奥ゆかしさなのか…邦画とは違えど、普通に引き込まれていった。
描き方とか言葉選びとか葛藤とか微妙な機敏とか、物凄くオシャレに痛々しく美しく描かれていたのが印象的だった。
初々しさの残る細身の17歳と大人な雰囲気のあるワイルドな24歳。
正反対である2人の男の幻想的でもあり、どこか現実的なロードムービー的展開が行き着く先は、固い友情ではなく、それ以上の愛情であった。
設定がエイズ発見前に変えられたのは、同性愛に対しての思う存分の愛をしっかりと描きたかったからではないだろうか。
ただただ男性同士の愛にしっかりと着目するための。
冒頭では、お互い好きなのに、気付かないフリをして、踏み外さないように自制して距離をとりながら、遠回しにお互いの想いを確認していくシーンが多い。
それこそお互いがお互いを思ってるのに、それに気づいておらず、堂々巡りで進展がなかなか見られない。
そこから中盤にかけては、男同士の恋愛なんてあるはずがないという気持ちとどんどんと好きな思いに駆られていき、バレたら嫌われるのではないかという葛藤がしっかりと描かれていて、そんな気晴らしに女性と戯れようとするが、満たされない微妙な2人がしっかりと映されていた。
中盤以降、だんだんとお互いの愛に気づき、深みにハマっていくエリオとオリヴァー。
そこにはもう2人しかわかち合うことができない美しい愛の形がしっかりと表現されていた。
誰も入る隙がない。
周りも過度に干渉しないからこそどんどん深くお互いが入り込めたのだと思うが、そこからの離れることになる展開はとてつもなく切なさが伝わってくる。
情熱的で深くわかり合ってハマった2人の愛は刹那的なもので終わってしまった。
それでもずっと脳裏に残ってもやもやし続けるエリオ。
そこからの父親との会話は、愛の本質と親のあり方を説いていて、そのシーンだけでも全員に見てもらいたくなった。
あんな親が本当に素敵。
性の描き方が過度に生々しすぎず、同性愛がテーマであるが全然重くなく、周りも受け入れていて、過度に干渉せず、むしろ後押ししているような寛大さもあり、だからこそ作品全体が透明性を帯びていて、とても美しく感じられた。
どんな愛だとしてもそれは美しいものだから、咎められるものでないし、後押しまではいかなくとも、見守られるべきであるということ。
他の人にわかり得ない愛はその当人同士でしか昇華することができず、その邪魔をすること自体がおこがましすぎる。
そんなメッセージが強く感じられた。
自分はLGBTではないが、そんなこと関係なくて、ただただ愛についてちゃんと考えることができた。
そこに性別なんて関係なくて、むしろ愛し合うことにルールなんて存在してはいけないのだと。
あらゆる愛の障壁を崩し、壊す大人青春映画の傑作。
なぜこれを映画館で観なかったのか。後悔が残る。
P.S.
ティモシーシャラメとアーミーハマーの演技が凄かった!
細かい心の機敏をあそこまで絶妙に表現できるかと。
アカデミー主演男優賞にノミネートされるのも納得。
今作がアメリカ、イタリア、フランス、ブラジルの合作なのも意義深い。