【映画】運び屋 〜置き忘れていた本当に大切なもの〜
運び屋(The Mule)
前代未聞の実話
80歳代でシナロア・カルテルの麻薬の運び屋となった第二次世界大戦の退役軍人であるレオ・シャープの実話に基づかれており、監督・主演ともにクリントイーストウッドによって映画化された作品。
家族よりも仕事を優先し、家族の世界よりも家族の外の世界を大事にし、外からの評価や名声を得ることを第一に生きてきた人生だったアールストーン(クリントイーストウッド)。 花屋を営み華やかな成果を残してはいたものの、時代はアナログからデジタルへ変わり、売上が低迷していくことで、差し押さえされた。
ずっと仕事一筋で生きていたアールは家族の大切なイベントを全てすっぽかしていたことで、家族にも見離され、孤独に生きることを余儀なくされる。
そこに近づく一人の男、ここから運び屋としての人生が始まり…
クリントイーストウッド監督は、実話を極端に重く描かずに、確かなメッセージを残していく作品が特徴的ではあるが、今作もそんな感じ。
だから極度に疲れずに、徐々にじんわりと感動が育まれていき、それが余韻に繋がる。
この映画は家族を持つものにこそ、より深く刺さってくる作品だと思った。
お金と時間、仕事と家族、これは何も等価交換でどちらかだけを大事にするのでなく、どちらもを大事にすべきこと。
何でもお金で解決して得られるものほど、縁の切れ目も早く、本当の意味での繋がりではないので、お金で武装していないありのままの自分を見てくれる人を大切にすることの尊さが訴えられていた。
家族を持つからこその責任はあるものの、近しい間柄だけでは消化しきれない承認欲求、そこから来るそれ以外の形に対しての没頭。
それが生んだあの状況である感じがした。
周りに承認欲求を満たしてくれる人がいるときには気づかない本当に大切なこと。
本当は優しくて実直で真面目な人気者のおじいちゃんでもこうなってしまうとなると、やっぱり盲目的になるのは人間の性なのかもしれない。
運び屋という闇に手を染めて、お金でたくさんの人を救っては、また頼まれて救ってを繰り返し、その運び屋の技術から闇組織にも頼られるようになり、だんだんと抜けられない沼にハマっていくアールの姿が生々しくとてもリアルに映し出される。
人のよさと無知さ、認められることがなくなっていくことを利用して搾取しようとする人たちはもちろん悪だが、このような沼にハマって抜け出せなくなる前に、ちゃんと自分で大事なことを時々で判断し、選択していける教養と余裕と美意識をしっかり養っていかないといけないなと感じた。
今作は取り返しがつかない状態になってから、最後の最後にやっと気づいて行動を変えれたからまだよかったし、捕まったからこそ断つことができたのは不幸中の幸い(表現はちょっとズレてそうだけど)と言えるだろう。
クリントイーストウッド監督が今だからこそ作ることができたユーモアがありながらも、物凄く深く大切なメッセージが入ってくる作品。
様々な経験をし、思考を張り巡らせてきたからこその奥深さであった。
ただのノンフィクション作品ではなく、そこには確かに彼自身の生涯と伝えたいことが刻み込まれていた。 「時間だけはお金では買えなかった」
「寄り添うのに、近くにいるのにお金なんかいらない」
ここに全てが詰まっていた。
自らを半ば自虐的に、こんな風にはなるなよと言われてるかのように、題材を扱うことで伝えていて、それでいて人はいつからでも変わることができるという自分へのメッセージでもあるように感じた。
老いを真正面から描きつつも、エンドロールで老いに抵抗する姿勢を余すことなく見せてくるところも抜け目がない。
イーストウッド親子共演は本当に実生活とリンクしているような感じがしてなんか感慨深い。
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