シネマライフキャリア - Cinema Life Career -

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映画『ばるぼら』感想:狂気を破滅的に美しく魅せる怪作

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狂気の果て。
あれは、幻だったのだろうか。

荒廃した都会の街、和ホラー的なオカルトテイスト、ミステリー要素、文学的描写、蔓延していく狂気からの人間の闇堕ちに加えて、いかにも往年の小説家っぽい雰囲気を纏う稲垣吾郎さんと


まさに文学に出てくるミューズを絵にしたようなミステリアスで魅力的なばるぼらを演じる二階堂ふみさん。


あらゆる要素が入り乱れながら作品としては崩れずに美しさを一点に保ち続ける、なかなか今までに見たことがない映画の世界を魅せてもらいました。
文学小説を書いている人の頭の中にはこんな世界が広がりながら書いていると思うと改めて凄いと思うし、やはり常人からは逸してるなとも思う。

堕ちていく人間の姿がここまで美しいと感じたことはそんなになくて、これこそがまた芸術の一つの形なのかなと感じた。

その人が破滅させるほどの魅力を纏うばるぼらは、美倉にとっての「ファムファタール=芸術」であり、幻想の世界に連れて行かれるように、ばるぼらの世界に誘(いざな)われていく。

現実になくとも心に内包されているスイッチみたいなものが、ばるぼらと介する中で開かれて押されていくような感じ。
そうなるともう引き返すことができない。

何もかもがなくなってもその人と一緒にいることを決めて、それゆえに周りから人がいなくなり、どんどん堕ちていく様はまるで『本気のしるし』を見ているようだ。

『本気のしるし』では、それが現実における人との関係の作られ方によって現実的に同等な関係の中で描かれていた感じがしたが、『ばるぼら』は運命論的というか、あくまで現実とは一線を画す文学的な幻想の中にある芸術として描かれていると感じたのが印象的。

共感できたり寄り添ったりして入り込んでいくのではなく、美しさに魅せられて気づいたら堕とされていっていたという感覚に近い。

まさに狂気の果て、終わりのない悪夢を見ているような映画だった。
この世界観を映像にできるとは!

P.S.
『凪待ち』の香取慎吾さん、『ミッドナイトスワン』の草彅剛さん、そして今回の『ばるぼら』の稲垣吾郎さん。
新しい地図として独立したお三方が次々にジャニーズ事務所にいたら難しいであろう役に挑戦していて、いずれも見入るほどの演技力を見せているのが凄い!
役に向き合ってる感をとても強く感じられる。
そして文学の中に出てくるミューズを演じると右に出る者がいないくらいの魅力を放つ二階堂ふみさん。
以前は『蜜のあわれ』でも遺憾なく成り切ってたけど、本作もとてもよかった。
今観てる『エール』とのギャップが凄い!
脇を固める渋川清彦さんや石橋静河さんも、やっぱりこういう世界観にちゃんと馴染んでいて、存在感もあってよかったです。